こんにちは、松波慶次です。
櫛木理宇さんの『虜囚の犬』をご紹介します。タイトルや表紙絵からして、悍ましそうですよね……。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:虜囚の犬
著者:櫛木理宇
目次
あらすじ
元家裁調査官の白石は、親友で刑事の和井田からある話を聞かされた。
それは、白石が過去に担当した少年・薩摩治郎が殺されたというものだった。しかもそれだけでなく、治郎は自宅で女性を監禁・殺人までしていたという。
女性を裸のまま鎖に繋ぎ、ドッグフードと水を与え、飼育ーー。
なぜそのようなことをしたのか。治郎を殺害したのは誰なのか。白石は歪な「家族」を目の当たりにしていく。
感想
相変わらず、櫛木理宇さんの小説は凄惨な内容ですね。
鎖で逆さ吊りにされ顔を真っ赤にして死んだ女性や、ドッグフードを食べる描写など、リアルに想像できて恐ろしくなりました。
今作のキーワードは「犬」です。
そして、加害者も被害者も、夫からのDV、父親からの虐待・性暴行など、真っ当な「家族生活」を送られていなかった。
DVももちろん許せませんが、性暴行など、反吐が出ますね。
実の娘でも義理の娘でも、欲情するなんて本当に気持ち悪い。家族間のそういう感情は、吐き気が込み上げてきます。
……読者にここまで嫌悪を抱かせる、櫛木理宇さんの生み出すストーリー、描写は本当に面白く、私は好きですが笑
虐待をしていた海斗の親が報復されたときは、暴力を肯定するわけではありませんが、スカッとしました。
海斗と未尋の友情が良き方向に向かって続きそうなことにも、安堵しました。「人を支配しよう」などとは考えず、幸せな楽しい人生を2人で送って欲しいと思います。
事件の真相については、最後、怒涛の勢いで暴かれていくのですが、ついていくのが少し大変でした。
あまりにも急展開だったので(^_^;)
梓と志津の関係については深掘りされず、あえてなのかもしれませんが、もう少し詳しく知りたかった気持ちがあります。
また、治郎や治郎の友達たちが志津に飼い慣らされたことについても、飼い慣らされていく過程が欲しかったな、と思ってしまいました。ちょっと唐突な感じがありまして……。
真相について思うところはありますが、楽しく読ませていただきました。
白石にとってハッピーエンドでしたし、そのまま「良かったね」で終わる……と、思いきや!
エピローグで志津の「犬」の話を入れてくる、鬼畜の極み!笑
ハッピーな気持ちは嫌悪と同情に変わりました。志津も、被害者だったのだと……。だからといって人を傷つけていい理由にはなりませんが……。
心を重く感じたまま、本を閉じました。