こんにちは、松波慶次です。
ずーっと前から気になっていた本。
やっと読みました! 今回は『共喰い』をご紹介します。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:共喰い
著者:田中慎弥
目次
あらすじ
今作は、2編収録されていました。
正直、ページを開き、「共喰い」を読み終わるまでこれが2編収録だということに気付かなかったです(^^;
それぞれのあらすじをご紹介しますね。
共喰い
篠垣遠馬は、女好きであり、性行為中に相手に暴力を振るう父と、離れて暮らす母との間に生まれた。実母と離れ、父と別の女性と3人で暮らす遠馬には会田千種という彼女がいる。
父のようにはならない。暴力など振るわない。
そう思っていた遠馬だったが、ある日、自分が「父の子」であると思い知るーー。
第三紀層の魚
信道の父は亡くなり、母と2人暮らしだった。
仕事が忙しい母の代わりに信道の世話をしてくれたのは、別で暮らす亡き父の母(祖母)と、亡き父の祖父(曾祖父)。
信道と曾祖父は、信道が釣った魚の話や戦争の話をし、楽しい時間を共有する。
しかし、ある日曾祖父が入院することに……。
感想
まとめて書こうかと思いましたが、せっかくあらすじも分けたので、ここでも2つに分けて感想を綴ろうと思います。
どちらにも共通したものをここで述べるならば、「さらっと読める」という点です。
共喰い
先述しましたが、私はこの本、「共喰い」のお話だけだと思っていたので、本の半ばほどまでページが進んだときに話が完結したときには
あれ( ゚Д゚)?
とちょっとびっくり(笑)
ですが、話の終わり方は綺麗で、しかし、胸に小さな波紋を残して幕を閉じます。
主人公やそれぞれの登場人物の心理描写はあまりなく、シンプルに淡々と物語は進みますが、だからこそ読みやすく、感じるところもあるのだと思います。
しかし、1つ残念なのは、私の個人的な期待値を超えられなかったことです。
この作品に興味を持ったのはもう数年前にもなり、そのときあらすじを読んだときの「めっちゃ面白そう!」の期待をそのままに今回読んだので、
あ、意外とあっさりだな(ドロドロしていないな)
と拍子抜けしちゃいました(^^;
面白かったんですけどね、個人的な部分ではちょっとがっかり。
ですが、そのがっかり部分を補ってくれたのがもう1篇の収録作「第三紀層の魚」でした。
第三紀層の魚
いやー
泣いた(´;ω;`)
これは泣いた(´;ω;`)
優しいおばあちゃんとひいおじいちゃん。
遠馬とひいおじいちゃんの会話。
ひいおじいちゃん、寝たきりなのに頭は結構しっかりしているし、遠馬もひいおじいちゃん大好きだし、2人で会話しているところがほのぼのしていて和みました。
物語には魚釣りが大きく関わっているのですが、初めから最後までここぞというところで魚釣りのシーンが入れられているので、そのシーンと物語の展開のマッチ具合に感動。
そして、ひいおじいちゃんの入院、葬儀などの「死」と、「死」を感じた遠馬の抱いた思いを、ひしひしと感じて、
私も身近な人の死の場面を思い出し、ほろり(´;ω;`)
仲のいい家族。人間は歳をとると死ぬ。歳をとらなくても、突然に死ぬこともある。
家族と過ごした楽しかった日々から、1人、また1人と離脱していく。
切なくて、苦しくて、ノスタルジーな気持ちになる今作。
とても好きです。何度でも読み返したくなるお話だな、と思いました。
総合感想
異なる2作のお話。
それぞれ良さがあり、また、楽しみ方も違います。
一石二鳥の作品ですので、ぜひ読んでみてください。
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