こんにちは、松波慶次です。
今回ご紹介するのは『思い出トランプ』。
日常の人々を描いているけど、どこか暗い影を落とす……
以下ネタバレ注意です!!
タイトル:思い出トランプ
著者:向田邦子
目次
あらすじ
いい妻なのに、どこかうすら寒いような怖さがある。ーー「かわうそ」
誤って我が子の指を切り落としてしまった。――「大根の月」
13編の作品が収録された短編集。
どれもが日常であり、不穏な影を落としている。
感想
ただの日常を描かない。
ただの日常でもありそうで、逸脱しているような短編集。
一話一話、読み終わると心の中にしこりが残るような、すっきりとしない読後感。
イヤミスというわけではありません。
ミステリーではない。ただ、人の心のミステリーと言いましょうか。
人は誰しも心の中に闇を持っています。
その闇が心を埋め尽くすとき、表に出るとき、人は一体どうなってしまうのでしょうか?
ありふれた毎日の中に影を落とす。
人の心情の揺れ具合。
移り変わり。
あなたと私。
この作品は、読む者の心を見透かすような、映し鏡の役割を担っているのだと思います。
読んでいて、心を指される思いをする人もいるでしょう。
「この気持ち……」と思い当たる節がある人もいるでしょう。
何気ない生活の中の、ほんの小さな出来事。
その中にさまざまな感情が芽生え沸き立つことを、実感します。
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