こんにちは、松波慶次です。
以前、小説投稿サイト「エブリスタ」に投稿していた作品を、
こちらに掲載しています。
目次
短文に潜んでいる恐怖
今回は、エブリスタで行われた「カイダンク」という企画で
2018年4月に執筆、投稿していた作品を掲載しています。
「怪談」+「句」=「カイダンク」なので、
短文の怪談話になります。
さらっと読める。
だけど怖い!!
ご覧ください。
①さくら
さくらの木の下には死体が埋まってるって
いい都市伝説が広まったものだ
だれも、掘り返したりはしないだろ?
②小さな叫び
鯉のいる池を眺める
小さな人間が数人 溺れていた
「助けてくれ」 小さな叫び
瞬間 鯉に飲み込まれた
③ドンセッセ
「ドンセッセ!」
ドンッ 銃声が鳴り響いた
④かゆい
花粉症で
目がかゆい 目がかゆい
隣にいる君が言う
「目玉とっちゃいたいよね」
その手があったか
⑤食べちゃいたい
食べちゃいたいくらいに
かわいい君の顔
君は冗談だと笑っているけれど
もうメニューは 考えてある
⑥渡り鬼
「ここを渡りたいですか?」
「はい」
「では、通行料をお願いします。あなたを差し出すか、
隣にいる弟さんを差し出してください」
「姉を差し出します」
⑦手形
テレビに手形が付いていた
布巾で拭いてもとれなかった
どうやらテレビの内側に付いているようだ
⑧誰にしようかな
歩道橋から
流れるように走る車を眺める
圧倒的トラウマを植え付け
生涯私のことを忘れられなくする相手は
誰にしようかな
⑨そういえば
大好きなあの人と目が合った
あの人は走り去ってしまった
あぁそういえば
私もう死んでいるんだっけ
⑩クスリ
「いつまでも元気でいられる」
そんな売り文句のクスリを飲み始めた
次第に 身体が機械化してきた
あとがき
桜って、きれいですよね。
花がピンク色だからでしょうか、よく言われていますよね。
「桜の木の下には死体が埋まっている」って。
そんなこと言ったら、梅や桃だってそうでしょうに。
しかし、桜ばかりそう言われるのは、
やはり桜には美しさと儚さが同居しているからでしょうか。
花が賑やかに咲いたと思ったら、ハラハラとあっけなく散りゆく。
喜びと怒り、哀しみと楽しみ、表と裏、美と死。
まるで、桜の美しさに嫉妬した人が作り上げたみたいですね。
「死体が埋まっている」だなんて……。
まぁ、本当かどうか確かめるために掘り返すことは、
私はやりたくありませんが……。