こんにちは、松波慶次です。
今回ご紹介するのは、『パプリカ』です。
アニメ映画化もしたSF作品です。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:パプリカ
著者:筒井康隆
目次
あらすじ
優秀なサイコセラピストである千葉敦子は、天才的な研究者、時田浩作とともにノーベル賞受賞者候補になっていた。
しかし、二人が勤める研究所には理事長派、副理事長派という派閥が存在し、二人を妬んだ副理事長を筆頭に、問題事件を起こし二人を研究所から追放しようという動きを起こす。
問題事件として、時田が開発した「DCミニ」の窃盗、そして、悪用を企てた副理事長と副理事長の寵愛を受ける美男研究員、小山内。
DCミニは、寝ているものの夢の中に分裂病患者などの精神状態を投射することができる。そのため、精神を破壊し、廃人にしてしまうことも可能だった。
悪用されるDCミニを取り戻すため、千葉は夢探偵・パプリカとなり、副理事長と小山内と戦いを繰り広げていく。
やがて事態は、夢と現実が交錯するようになりーー。
感想
ひっさびさに、あらすじ長く書いた! でも、もちろんですけどすべてを語っていません! ほんの少し、だからこそ『パプリカ』、読んでほしいです!
精神や夢が軸となるSF作品、『パプリカ』。夢探偵であるパプリカが不安症、抑鬱症などの患者の、夢の中に入って治していく。禁じられていることではあるけれど、効果はてきめん。そして、治療された者たちはパプリカの魅力にも惚れ込んでいく。
夢の中で”夢”だと知れたら、なんでもできそうですよね。自分が好きな場面に変えたり、生身じゃできないこと(例えばビルの屋上から飛び降りること)も、可能なんじゃないかと思えます。
明晰夢。夢の中で夢だと自覚でき、夢をコントロールすること。楽しそうではあるけれど、睡眠の質が悪くなったり、夢の世界が楽しすぎて現実に楽しみを感じられなくなるとか、言われていますよね。
確かに、眠りが浅いときに夢を見ると言われているので、その夢をコントロールできるとなると、さらに浅い眠りであることが考えられます。眠りの質に左右されず体調を維持し、現実と夢の区別をしっかりつけられる精神力を持たないと、危険そうですね。
本作に登場する千葉は、その道のスペシャリスト。高い精神力を持ち、精神病をもつ患者の夢の中に入っても、夢に惑わされず自我を持ち、精神を壊すことも夢に囚われることもなく患者を治療する。
患者の夢の解説をパプリカがしてくれるのですが、それがとても興味深いです。私自身が夢をよく見るので、そもそも精神と夢の話である『パプリカ』は”小説”という観点以外からも楽しめました。
パプリカやその仲間たちと一緒なら、夢の中に入ることも楽しそうだと思えましたし、DCミニをめぐる戦いも助け合いながら夢に取り残されることなくできそうな気がしました。
中盤から終盤にかけてが、ちょうどDCミニ争奪戦のところで、面白くてページを捲る手が止まりませんでした。しかし終盤は、もうめちゃくちゃ! 夢と現実が交錯し、スケールが大きくなりすぎて、ちょっと困惑。
でも、”夢”なのか”現実”なのか、よく分からなくなっている感じが、『パプリカ』だからいいのだと思います。
最後、ラジオ・クラブの二人の会話……。千葉たちは、現実にいるのか、それとも夢の中にいるのか……。
ちなみに、『パプリカ』を読む前にアニメ映画「パプリカ」を見ました。小説と映画、話がまったく同じではありませんでしたが、映画も楽しめました。声優が林原めぐみさんや大塚明夫さんなど、豪華な面々でしたし、アニメーションの色づかいが綺麗で見入ってしまいました。
私は基本的に原作派なのですが、今回は映画を先に見たということもあり、どちらも好きです。どちらも楽しめます。
もし小説だけじゃなくて映画も見たいということでしたら、映画から先見たほうがいいかもしれません。私がよくあるのですが、原作読んだあとに映画を見ると「原作のほうがいい」となることが多いので(笑)