こんにちは、松波慶次です。
今回ご紹介するのは、百鬼夜行シリーズ第8弾『陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず)』です。
京極堂シリーズ第1弾
【姑獲鳥の夏】事件か?はたまた怪異か?辿り着いた先の切ない真相とは?
第2弾
【魍魎の匣】バラバラ殺人!新興宗教!誘拐事件!すべては魍魎のせい?
第3弾
【狂骨の夢】首なし死体と髑髏の目撃!気味悪い事件の真相とは?
第4弾
【鉄鼠の檻】土砂に埋もれた蔵と坊主殺害と謎多き寺……ミステリー大作
第5弾
【絡新婦の理】目潰し魔に絞殺魔!事件の先には蜘蛛の姿が!
第6弾
【塗仏の宴〜宴の支度〜】物語は平行線?消えた村と催眠術とは?
第7弾
【塗仏の宴〜宴の始末〜】点と点が繋がり真実が明らかに!そして白い男が登場
以下ネタバレ注意です!
タイトル:陰摩羅鬼の瑕
著者:京極夏彦
あらすじ
由良昂允が住む館は、鳥の剥製があちこちに置かれた通称「鳥の城」である。その館で、5度目の婚礼が開かれようとしていた。
過去4度の婚礼では、花嫁が初夜に殺害されるという痛ましい事件が起きていた。そのため、5度目の婚礼では花嫁を守るよう、探偵・榎木津と小説家・関口も招待され、癖のある親族や従順な執事たちと館で過ごす。
誰が花嫁を殺しているのか?
5度目の殺人は防げるのか?
初夜が明けたとき、悲しい事件の真相が解明されていくーー。
感想
今回は関口が主に登場した作品でした。あ、榎木津も! 相変わらずハチャメチャでした(笑)
関口について。百鬼夜行シリーズ第1弾『姑獲鳥の夏』を読み、その当時、関口のことをあまり好きになれませんでした。
理由を問われると、難しい。優柔不断で、すぐ口ごもって、上手く言葉にできなくて、言いたいことをはっきりと言えない……。
じれったかったのですかね。周りの人物たちがはっきりしているからか、関口の態度に好感を持てませんでした。
しかし、巻を重ねるごとに見方が変わってきて、前作『塗仏の宴』でだったか、少しだけ好感を持てるようになったのです。
そして今作。私は気が付きました。関口のことを好きになれなかった理由に。
それは、同族嫌悪。
今作で関口が思うこと、考えることが、私と似ていると思ったのです。自分は駄目な人間だとか、劣等感とか、小さい人間だと考えてしまうことが。具体的にハッとしたページがあったのですが、忘れてしまったので抽象的な表現をお許しください(笑)
ともかく、私は関口と思考が似ていること。そのため、同族嫌悪であまり好きになれなかったのだと、腑に落ちたのです。
気が付くと、もうね、関口のことが好きになりますよね。応援したくなるんですよ。相変わらず、大事なところではっきり言えないところはじれったいのですが、温かい目で見られると言いますか、「関口も色々考えて、大変な思いを抱いているんだよな」と頷けるようになりました。
関口がよく話した相手で、由良がいます。由良は元伯爵なのですが、聡明で優しくて、「死」に関する概念がない人です。
「死」に関する概念がないため、花嫁を「家族」にするため殺すのですが、それは殺したくて殺しているわけではない。
最後は京極堂に憑物を落とされるのですが、そこがまた切ない。なぜなら、愛する女性と家族になるために行なっていた行為が、実は「死」を相手に与えていた行為だということに、由良はそこでやっと気付くのですから。
悲しく、切ないストーリーです。
この由良という人物。とても個性的で面白く(榎木津とは違う面白さです)、聡明さも京極堂と通じるものがあるのでぜひまた登場していただきたい。私は結構好きな人物です。
他に、今回の事件に欠かせない元刑事・伊庭さんというおじいちゃんが登場するのですが、伊庭さんも木場のように熱くて冷静な性格だから、好感を抱きます。伊庭さんと木場のコンビで事件解決に奔走してほしいとも思ってしまいました。
次作『邪魅の雫』で、現在刊行されている百鬼夜行シリーズは最後ですね。読み終わったら、次の刊行が待ち遠しくなりそうです。
読んでいる最中に新刊が出たら、ちょうどいいんですけどね。
あ、でも。その新刊でシリーズ完結しなかったら、結局次巻が待ち遠しくなって……これ、完璧に京極沼にハマってる(笑)
京極堂シリーズ9作目の読書記録はこちら↓
【邪魅の雫】一人死に、また一人死ぬ……黒い雫がもたらした邪な思い
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