こんにちは、松波慶次です。
今回ご紹介するのは、前回ご紹介した『悪徳の栄え』の下巻です。
上巻の感想は「【悪徳の栄え・上】乱痴気騒ぎに拷問・虐殺!悪逆の限りを尽くした美女」をご覧ください。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:悪徳の栄え・下
著者:マルキ・ド・サド
あらすじ
悪徳まっしぐらのジュリエットの非情・残酷さはとどまるところを知らない。
相変わらずの乱痴気や残虐な拷問、殺人を犯し続け、クレアウィルやデュラン、ノアルスイユなど懐かしい面々とも再会する。
妹・ジュスティーヌとも出会ったが、涙ぐましい感動の再会ではなかった……。
感想
読み始めてすぐ、「あれ?」と思いましたよ。
なぜなら私は、下巻は妹・ジュスティーヌの話かと思っていましたが、そんなことはなかったからです。変わらず、ジュリエットのひどい悪徳ぶりの話でした(笑)
ジュスティーヌの話は別の小説のようですね。『美徳の不幸』『新ジュスティーヌ』というタイトルであるようです。
ジュスティーヌの話を期待していた私は、「なぁーんだ」と少々がっかり。しかし、ジュリエットの残酷さに磨きがかかっていたこと、クレアウィルやデュランなど懐かしい面々が再登場したことで、下巻もちゃんと楽しみました。
しかも、最後の最後でジュスティーヌ登場!
ちょっと唐突な出方だったので、原作(?)と全く同じなのかは疑問に感じましたが、この本は「マルキ・ド・サド選集」なのでちょっとくらい編集しているのかな、と。
ジュスティーヌの話をする前に、今作で「うげっ!」と思ったことについて綴らせてください。それは、妊婦に対する扱いとフォンタンジュへの仕打ちです。
もともと老若男女問わずひどいことばかりしていましたが、妊婦に対しても同様の残虐さを発揮して、もう読んでいて胸糞が悪くなりました(「胸糞悪い」は褒め言葉)。
痛いどころじゃなく、一生懸命お腹の中で赤ちゃんを育ててきたのにこの仕打ち……「母親」としての気持ちも考えてしまって、胸糞悪かったです。
フォンタンジュへの仕打ちは……五十嵐貴久先生の作品『リカ』の最後を思い出しました。
あまり詳しく書くと『リカ』のネタバレにも繋がってしまうので、控えます(笑)それにしても、ジュリエットもノアルスイユもひどすぎる。
そして、ジュスティーヌ。「最後はジュリエットが何かしらの報いを受ける(死ぬ)のかなぁ」と思っていたら、死んだのは善であるジュスティーヌ。
悪は栄え、善は息絶えるというストーリー。
相変わらず「悪徳」に対する演説は説得力があって、読みごたえがあります。全体を通して面白いので、気になった方は乱痴気騒ぎや拷問系に抵抗がなければ、読んでみてください。
サディズムを通り越しすぎるほどのサディズムです(笑)