こんにちは、松波慶次です。
今回ご紹介するのは、『地獄の犬たち』です。
痛いっ! とつい叫びたくなります。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:地獄の犬たち
著者:深町秋生
あらすじ
兼高は、東鞘会(とうしょうかい)という巨大な暴力団組織で、邪魔者を消すキラーを務めていた。相方の室岡とともに多くの人の命を奪ってきたが、その正体は警察の潜入捜査官だった。
目的は一つ。元警察官、元潜入捜査官でありながら極道に成り果てた東鞘会のトップである十朱から、警察が極道へ潜入捜査官を放っていたという証拠を回収すること。
警察だとバレたら即お陀仏の緊迫した環境で、兼高は無事目的を達成できるのか?
感想
凄まじい暴力の嵐。極道の世界は映画やドラマで見たことはありましたが、やはり「けじめ」や「仁義」という言葉が深く関わってきますね。
筋を通すために、殴る。ただ殴るのではなく、鳩尾に蹴りを入れたり、人を殴殺するような破壊力抜群の張り手を放ったり。
しっかりとした縦社会。だからこそ、子は親を尊敬し、弟は兄を慕う。もちろん、嫉妬や相性もありますが、絆が存在している。
兼高と室岡の兄弟も、信頼関係がありました。極道の世界で「親子」や「兄弟」というのは、実のものだけを指すのではない。盃を交わすことで、「親子」や「兄弟」になれる。
サイコパスな室岡は、兄である兼高を慕っていました。だからこそ、兼高が警察官だと分かったときの、室岡の気持ちを思うと苦しくなります。
室岡だけでなく、兼高も辛かったはずです。潜入捜査と言っても、何年も極道の人々と付き合っていれば、情は湧くでしょう。
弟である室岡、親である土岐、外兄弟になった大村や海老沢、本並など。極道である兼高と、警察官である兼高(本名は出月)は、葛藤します。
極道は潰さなければいけないと頭では分かっていても、近くで無邪気なところや筋を通すところ、人情的なところを見て、感じていると、本当の親子や兄弟と錯覚してしまう。
子は親を守り、兄弟も助け合う。無事任務を終えた兼高は、いずれ口封じのために警察から消される自分のことと極道の世界のことを重ねて、警察組織のしていた極道への潜入捜査についてを最後、マスコミに暴露したのでしょう。
警察は守ってくれない。使った駒は捨てられるだけ。極道も裏切ったが、警察の悪事をバラシて本来身を置いていた場所も裏切る。
まさか、ラストがそうなるとは思いませんでした。読み進めながら、まさか兼高も極道の世界の人間になるんじゃないか、十朱が死んで、東鞘会のトップになるんじゃないか……と考えていました。
私の予想は裏切られ、すっきりとした、無念を晴らすようなラストを迎えたと思います。
恐ろしくも熱い男たちの世界、ぜひ読んでみてください。
サスペンス小説の読書記録はこちら
私の著書一覧はこちら