こんにちは、松波慶次です。
みなさんは村のイメージってどういうものですか?
私は
- 集会への不参加や付き合いが悪いと即村八分
- 家の鍵をかけない
- 村内は誰でも知り合い
- 村と外は別の世界
というイメージがあります。相当田舎の村のイメージですけど(^_^;)
今回ご紹介するのは、村の怖さを凝縮した櫛木理宇さんの『鵜頭川村事件』。
ハラハラドキドキが止まりません!
以下ネタバレ注意です!
タイトル:鵜頭川村事件
著者:櫛木理宇
あらすじ
岩森は、亡き妻の実家である鵜頭川村へ娘の愛子とともに墓参りに訪れた。
顔見知りの青年、辰樹に会うと、彼は村で権力を握る矢萩一族の会社で、奴隷のように働かされていた。
本当は上京して大学に進むはずだったのに。彼の兄が矢萩の会社で事故死したため、跡取りとして村に残ることを強制されてしまったのだ。
岩森は気付く。辰樹の眼が変わってしまったことにーー。
土砂災害が発生し村は孤立。食べ物や飲み物が減っていく中、男尊女卑の言動は高まり、矢萩姓とその他の姓との対立も深まるばかり。
そして、ついに狂気の夜が訪れる。
感想
村怖ぇ〜!
村って、先述したようなイメージがありますが、よく言えば
- 知り合い同士だから助け合いが当たり前
- 余所者がきたらすぐに分かる(防犯上いい)
- 結束が強い
だと思うんですよ。
でも、今作を読んで、やっぱ人間同士、合う合わないはあるよなぁと思いました。
負のイメージの方が色濃く出ています。
女は男の下。余所者は結局余所者。家長が1番偉い。村長が1番偉い。親の言う通りに行動するのが子供。
読んでいて、嫌悪を覚える箇所がしばしば。
女同士のネチネチしたいじめや、舅からの嫁いびり。助けてくれない旦那……。
すみません、私が女だから、そういうところにより嫌悪を覚えてしまいました笑
作ってもらった飯に文句言うなら食うな!家や舅のために結婚したんじゃないんだぞ!
いびられている妻を庇いもせず、逃げる旦那があるか!不甲斐ない!情けない!お前が結婚したいと思って一緒になったんだから、親や家のしがらみから守れよ!
作中の登場人物、元市と隆也のことですね。
まぁ、隆也は最後の最後で元市を殴り倒しましたが、妻が犯されそうになったときにやっと行動するなんて、おせーよ!と張り倒したくなりました。
もうムカムカ。元市に言い返さない、隆也に文句も言わない妻・有美さんにもムカムカ。
即離婚ですわ、こんな舅にこんな旦那。
……さて、読書中胸に溜めていたムカムカを吐き出しスッキリしたところで、改めて今作が面白かったということをお伝えしたいと思います。
村で若者と矢萩姓の対立が発生し、やがて若者の暴力と狂気の暴動が始まります。
家の打ち壊し。殴る蹴るは当たり前。食料や貴金属を強奪。相手が女、子供でも容赦しません。
仲間割れでは斧で相手を切るなど、「殺人」も厭わない様子。
実際に、死人も出ています。
そんな非日常の中を幼い愛子を連れ逃げる岩森。もう、ハラハラが止まりませんでした。
他にも、暴動に参加しなかった若者・港人やその友達の逃走劇も読んでいて気が安まらず、スリリングな展開になっていきます。
最後、暴動の首謀者である辰樹と岩森の死に物狂いの戦いは、怖かったです。
主人公である岩森が死ぬことはないと思っていましたが、まさかの展開もありえる。それほど、苛烈で、恐ろしい血で血を洗う戦いでした。
愛子のために、生き残ることができて良かった。
戦いを見届け、安堵しました。
暴動を起こした辰樹の鬱屈した気持ちについて、否定はできません。
村に縛られた若者に、同情します。しかし、やり方を誤った。
この事件の首謀者が根っからの悪人でなかったことが、いい意味ですっきりとさせない読後感を与えてくれます。
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