こんにちは、松波慶次です!
今回ご紹介するのは、湊かなえさんの『ユートピア』。
サスペンス要素もあり、女たちの自分本位な心情もあり……。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:ユートピア
著者:湊かなえ
あらすじ
鼻崎町は、自然豊かな田舎町。
昔ながらの風習を持つ町に住む菜々子と、夫の転勤に伴い町にやってきた光稀、自然に魅了され、町に建つ同じ芸術家仲間の健吾の家に住むことにしたすみれ。
商店街の祭り、車椅子の人を応援する福祉活動「クララの翼」、そして、5年前の殺人事件……。
彼女たちの心と町に、不穏な気配が立ち込めるーー。
感想
ただの「3人の女性が住む町の話」ではなく、サスペンス要素のある作品です。
『ユートピア』ってタイトルや「女性たちの生活の話」などと聞くと「日常ほのぼの系かな?」とも思いますが、とんでもない!
流石、湊かなえさん。見事に嫌な気持ちにさせられました。
もうね、読んでいる最中、ずっと気持ち良くなかったです。
ずっと気持ち良くなかったというのは、みんなが自分本位な解釈ばかりするから。
それと、勝手にやっていることなのに恩着せがましいから。
例えば、久美香が実は歩けるという噂が広がったとき、問い詰められた菜々子が「心因性のものだから」と説明すると、「そんなの聞いてない!騙された!」状態に……。
福祉活動でお金を扱っていたため「詐欺で逮捕されるかも」という恐怖がすみれや光稀を襲い、「私は悪くない!被害者!」という考えが浮かんでしまう。
他には、光稀が東京のいいお土産を菜々子に渡したときに、「その場ではありがとうって言うけど、のちに美味しかったとは言ってくれない」、「もっと喜んでほしい」と心の中で文句を言います。
光稀に限らず、恩着せがましいと言いますか、自分の言動に対して「相手に何かを求める」場面が多いんですよね。
そのため、読んでいて気持ち良くなかったんです笑
作品自体は、面白かったですよ。サスペンス要素あり、ネチネチした心理描写ありで。
「人間」の心情を細かく描いている作品です。気持ち良くはありませんが、「ネチネチ心理読みたい!」という方はぜひ読んでみてください。