こんにちは、松波慶次です。
突然ですが、妖怪の存在を信じていますか?
私は、いるんじゃないかな~と思います。ちなみに、幽霊の存在も信じています。
いやいやいないだろ!
そう思っている方は、ぜひいまから紹介する本を読んでいただきたい!
きっと、妖怪の存在を信じたくなりますよ……。
京極夏彦先生著『豆腐小僧 その他』です。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:豆腐小僧 その他
著者:京極夏彦
あらすじ
妖怪が好きな少年、淳史は、研究者である母の「天候を操る」という壮大な実験のために、ある村にやってきていた。
古びたお堂を見た淳史は、このお堂に似合うのは豆腐小僧だと、呑気にそんなことを思う。すると、なんとそこに豆腐小僧がポンっと湧いたのである。
もちろん、淳史には……いや、人間には見えていない。
豆腐小僧だけでなく、滑稽達磨もポンっと湧き、妖怪たちの愉快な会話と人間たちの金と利己的な会話が交互に魅せる、ユニークな物語。
感想
私の豆腐小僧の印象は、まさにこの本の表紙絵の通り。豆腐を持って、差し出すようにしながら、ただただ立っている。
害もなければ利もない。
いや、利はあるのかな? 豆腐をくれれば、空腹は紛らわせるかもしれない。
しかし、この豆腐小僧、自分から豆腐をとったらただの小僧になると、豆腐を手放すことをしないのである。
まぁ確かに、豆腐をとったらただの小僧にはなりますね。
いやー、実に面白い話でした。前述したような愉快な内容が盛り込まれ、ついフフッと笑ってしまいます。
この作品、まず初めに著者である京極夏彦先生の「妖怪講座」から入るのですが、そこで妖怪についてまず学びます。
学ぶといっても、妖怪は濡れ衣で生まれたものだと、そういうようなことが書かれています。夜道で誰もいないはずの後ろから足音が聞こえたら怖いけど、それが「べとべとさん」という妖怪なら怖くない。
足音を「べとべとさん」という妖怪のせいにすれば、幽霊だなんて考えなくて済みます。
そう、まさに、妖怪とはそういうことなのだそうです。
濡れ衣で生まれたもの。いないけど、いる。いるけど、いない。
その妖怪講座からきちんと読んでいくと、このお話はより一層楽しめます。
豆腐小僧がその話を滑稽達磨から聞き「ぬ、濡れ衣っ!」と抗議の声を上げたときなんか爆笑でした(電車内だったので、心の中で(笑))
そんな濡れ衣で生まれた妖怪たちの、頭がでかいくせに中身が空っぽの豆腐小僧に対する辛辣なセリフの数々がまた面白い。
「出オチ」呼ばわりしたり、「○○小僧」と豆腐という名前を憶えてもらえなかったり……
それでも謙虚に受け止め、怒らず訂正する豆腐小僧が、おバカでかわいくて……たまらなかったです(笑)
妖怪たちのユニークな会話だけでなく、人間側は人間側で、「天候を操る」機械を巡りひと騒動あるので、ストーリーとしてもとても楽しめます。
これを読めば、妖怪に詳しくなるしもっと妖怪のことが好きになる!
妖怪を信じていなかった人は、もしかしたら今夜、夜道を歩いているときに後ろから足音が聞こえたら「べとべとさんがいるんだな」と思うかもしれませんよ!
あ、それと。
豆腐小僧とともに収録されていた死神の話が面白かったですね。2つの死神の話があったのですが、それも愉快でした。
死神の話で愉快と聞くと「?」という感じですが、運のない男と死神の会話が漫才のようで、すいすい読み進められました。
そのオチにも注目。まさに、「オチ」という感じで、その滑稽な舞台が鮮明に浮かびました。
楽しめる話がいくつも収録されている作品です。
妖怪好き、妖怪好きになりたい、妖怪と友達になりたい!
という方は、ぜひ読んでみてください。
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