鉄の塊|戦場で動かない君に僕の心臓をあげた【SF短編】

鉄の塊|戦場で動かない君に僕の心臓をあげた【SF短編】

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こんにちは、松波慶次です。

SF×ショートストーリー『鉄の塊』の小説と朗読動画を載せています。

目次

あらすじ

戦場に降り立った僕と君。君は撃たれて動かなくなった。

僕は君に生きていてほしい。だから僕は、君に僕の心臓をあげた……。

小説『鉄の塊』

文字数:約1300字

 僕の心臓を君にあげた。

 飛び交う銃弾。落ちてくる爆撃。土埃に怒声。一歩踏み出せば地雷で身体が吹き飛ぶ世界に降り立った僕たちは、ただ駆けた。一人でも多く敵を倒すために。国の命令に従うために。

 そして君の胸に無数の穴が開いたんだ。土埃のなかでも見えた。銃撃と爆音のなかでも聞こえた。飛び散る赤色。君の息を呑む音。

 仰向けで倒れ、口から血を流す君の横にひざまずく。全身で呼吸をする君に聞いた。

「大丈夫?」

 君は力なく笑った。言葉はなかった。

*

 最初に会ったとき、君は僕に言った。

「人間だけじゃなくてロボットも戦地に投入されるんだ。だったらロボットだけでいい気もするけど」

 からかうように笑う君に僕も言った。

「僕もそう思うよ。人間の考えることはよくわからないね」

「人間の俺もわからないんだから、ロボットのお前には余計わからないよな」

 僕たちは示し合わせたようにぷっと吹き出した。僕にとって初めての人間の友達だった。

「故郷に妻と子供がいるんだ。二人のためにも死ぬわけにはいかない」

 ある日の訓練終わり。寮で君は僕に写真を見せてくれた。綺麗な女性と赤ちゃんが映っていた。

「じゃあ、バディの僕が君を守るよ。僕はロボット、君は人間。どっちを優先すべきかはわかってる」

「やめろよ。俺にとってはお前も十分大事なやつなんだ」

 でも君には家族がいる。僕にはいない。それに腹が消し飛んでも、顎から下がなくなっても、僕は死なない。僕のほうが丈夫だから。

*

 持っていた銃を置き、軍服を脱ぎ、胸のボタンを操作して蓋を開けた。人間そっくりに作られた僕の疑似的な心臓が姿を見せた。

 君がもう死ぬことはわかっていた。それでも生きてほしかったから、人間の生命の源である心臓をあげたかった。

 色とりどりのコードを引きちぎりながら心臓を取り出す。精巧に造られた鉄の心臓は脈打っていた。

 すでに目を瞑り呼吸をやめていた君の胸をナイフで開いた。停止した赤い塊と僕の心臓を交換する。胸を閉じる。応急手当用に持っていた針と糸で縫った。君は動かなかった。

 僕ももう長くは動けない。課せられた使命を全うするため、銃を持って立ち上がると君に背を向けた。僕が壊れたら君と同じところにいけるかな? きっと無理だろうな。僕は人間じゃないから……。

*

 もしもあの時。お前が俺に心臓をくれなかったら、俺はあの凄惨な戦場で目覚めることはなかった。

 胸が重かった。熱かった。縫い痕を見て、何が起きたかを理解した。無数の死体が転がるなか、ひとり、叫んだ。

 昨日のことのように蘇る情景を目に浮かべながら窓の外を見る。招集された男たちが整列していた。訓練が始まる。

「失礼します」

 軍服を着た男が部屋に入ってきて敬礼した。

「長官。また国から要請が来ています」

「無視しろと言っただろ」

「はい。しかし、軍隊へのロボット導入は戦力補充と強化の観点から必須だとお怒りでして……」

「無用だ。死なせるために造るなど、ロボットに対して失礼だ。彼らにも意思がある」

「しかし……」

「戦争をしているのは人間だ。彼らを巻き込むな」

 男はそれ以上何も言わなかった。もう一度敬礼して部屋を出る。

 胸に手を当てる。鉄の塊は静かに脈打っていた。

朗読動画『鉄の塊』

動画時間:約6分

あとがき

ロボットとか、機械系のモノを作れる人、すごいなって思います。電気の仕組みとか、配線の繋げ方とか、そもそも設計図も緻密に作っていないと上手く完成しませんもんね。

ものづくりは好きですし、機械系のモノも作ってみたいなとは思うのですが、ハンダゴテとか、一般家庭にはなさそうなものを集めなければならなそうですし、いろいろ電気系統も分かってないと難しそうです。

自分でロボットを作って、そのロボットと友達になれたら、面白そうですね。

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