こんにちは、松波慶次です。
「隠蔽捜査」シリーズの1冊である今作。
といっても、こちらもらいもので、隠蔽捜査シリーズを読んだことがありませんでした。事前情報も仕入れないまま読み始めましたが……面白かったです。
以下ネタバレ注意です!

タイトル:探花
著者:今野敏
あらすじ
神奈川県警の刑事部長・竜崎伸也。竜崎はまだ神奈川に来たばかりで、米軍基地との関係も、神奈川の観光地や独自の環境も、あまり理解できていなかった。
そんな折、横須賀で殺人事件が発生する。場所は米軍基地の近く。
同期でトップ入庁した八島圭介が神奈川県警に赴任してきて、横須賀には竜崎ひとりで行くことを提案してきた。
竜崎はひとりで出向き、米軍との交渉や事件に関わっていく。
次第にその殺人事件は、八島や福岡の暴力団の影も見えてきてーー。
感想
「隠蔽捜査シリーズ」初読みでしたが、まったく問題なく楽しめました。
恐らくほかの作品ですでに描かれているのでしょうが、竜崎のひとり息子が麻薬関係で捕まったことがあること、その件によって竜崎が左遷され、キャリアコースから外れたことなどは、深く知らなくても読めば理解できますし、物語にものすごく関わっているわけでもないので、竜崎の過去を知らなくても本作を読むのに困りはしませんでした。
今野敏さんの作品だと、直近で東京湾臨海署の安積班シリーズを読んでいたので、安積との立場や性格の違いも面白かったです。安積はどちらかというと現場の人で、部下との距離も近い感じでしたが、竜崎は刑事部長、しかもキャリアなので、一般の捜査員からしたら雲の上の存在。公用車で移動して、捜査本部に入るとみんながみんな仕事の手を止め、敬礼をする。
安積は自問自答といいますか、部下との関わりなどを悩みながら進んでいく。一方の竜崎は、基本的にばっさりとした性格で、人を大切にはしているけど、あまり迷いがない。自分の中の正義を軸に右か左か、上か下かを即座に判断する。
どちらも上に立つ者として、「責任は取る」というスタンスなので、上司としては安心感があります。ただ、個人的には安積のほうがいいかな笑
竜崎は、淡々としすぎていて、声を掛けづらい印象です。世間話とかをしようものなら、捜査中とかじゃなくても、「いまはそんな話をしている暇はないだろう」と打ち切られそうな……とっつきづらさがあります。
表題の「探花(たんか)」に関しては、竜崎が奥さんから「紫の薔薇の写真を撮ってきて」と頼まれるのですが、それで「探花」なのかなと思っていました。
しかし、それは違っていて(違うわけではないのかもしれませんが)、「探花」は中国の試験・科挙の最終試験の合格者のうち、成績No.3の人のことをそう呼ぶそうです。竜崎は成績3番手で警察官になったので「探花」。ちなみに、八島が1位(状元:じょうげん)、仲の良い同期・伊丹が2位(榜眼:ぼうがん)。
キャリアの椅子取りゲームにこだわっている八島は、探花の竜崎を気にしていますが、竜崎は出世争いにはまったく興味がない。裁量を得るために出世はしたいと思いつつも、偉くなってどうなりたいというわけではない。ただ目の前の仕事をする。非があれば部下にもきちんと謝る。責任も取る。
隠蔽捜査シリーズ、実はもう1冊いただいているので、そちらも読んでいこうと思います。竜崎がどんな事件に関わるのか、竜崎らしいスタンスを引き続き見られるのかと思うと、楽しみです。
