こんにちは、松波慶次です。
Twitterでフォロワーさんからおすすめいただいた小説『塩狩峠』をご紹介します。
もうね、本当にね……読んで良かった。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:塩狩峠
著者:三浦綾子
あらすじ
永野信夫は、幼い頃に母を失い、祖母と父によって育てられた。
ヤソ(キリスト教)嫌いで、「男子とはこうあるべき」という厳格な祖母の教えを受け育った信夫だったが、多くの人と関わっていき祖母の教えが絶対ではないことを知る。
また、キリスト教にも触れ、信夫の心は年々変化をしていくのであった。
北海道、旭川の塩狩峠で実際に起きた鉄道事故をモチーフに描かれた今作。
あなたは他人のために自分を犠牲にできますか?
感想
実際に起きた鉄道事故をモチーフに描かれた作品。
そこに惹かれて、読みました。
鉄道事故が主に描かれているのかな? と思っていたのですが、のちに鉄道事故で自らを犠牲にし乗客の命を救った主人公、永野信夫の幼少期から死亡するまでが描かれており、彼の成長を見守りながら読み進めることができます。
幼少期から読むことで、彼に対して親近感が湧きます。彼の心の成長や思考の変化も分かるので、なおさら、死んだときに悲しみを強く感じました。
彼の母親は、彼が幼いときに死んだとされていましたが、実は生きていました。
では、なぜ彼と一緒に過ごさなかったか。
その理由は、祖母がヤソ嫌いだったから。信仰を捨てれば彼と一緒に暮らすことができましたが、母親は彼を……息子を捨て、信仰をとったのです。
祖母が死んでから母親と、知らぬ間にできていた妹と一緒に住むことになるのですが、彼は「息子よりも信仰をとった母」を心の奥底では恨んでいるような素振りを見せます。
そのため、ヤソに対してもあまりいい印象を抱かず、ヤソを信仰するもの、すなわち、キリスト教信者を白い目で見ていました。
しかし、母や妹、実は父までもヤソで、自分が愛した女もヤソだった……。周りにヤソが多く、しかも、興味をそそられる「教え」を語る。
次第にヤソに魅了されていき、彼は熱心なヤソ信者となるのです。
彼は、給料袋を盗んだ同僚をかばい、その同僚のために、好きな女がいる土地を離れて一緒に転勤までしました。
どれだけ嫌味を言われても、ムッとしても、許しました。
その熱い信仰心が、峠を高速で逆走する列車を止めるため、「自己犠牲」の精神を生み出し、結果、乗客の命と引き換えに命を落とすことになるのです。
しかも、その日は愛する女との結納の日。
肺病を患った女が治るまで、約8年も待ちました。
やっと治って、2人は幸せになれるという矢先の出来事です。
私が彼なら、自己犠牲ができたでしょうか? いや、きっとできなかったでしょう。
自分の幸せを放棄して、他人を助けるなんて……
「できます」と即答できる人がいるなら、私は尊敬します。
この本を読んで、私は主人公、永野信夫に敬意を表します。また、彼のモチーフになった長野政雄氏に対しても、敬意を表し祈りを捧げたいと思います。
北海道の塩狩峠に行きたくなりました。
そして、そこで白い雪に覆われた線路を見て、永野信夫の……長野政雄氏の鮮血を想像し、思いを馳せ、固く、手を合わせたいと思います。
「義人なし。一人だになし」
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