ピエロが笑う|刑事の私は殺人ピエロを追っていた…夢の中の話だ

ピエロが笑う|刑事の私は殺人ピエロを追っていた…夢の中の話だ

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こんにちは、松波慶次です。

サスペンス×ショートストーリー『ピエロが笑う』の小説と朗読動画を載せています。

目次

あらすじ

夢を見ていた。

私は刑事で、連続殺人犯である「ピエロ」からショッピングセンターの爆破予告が届いた。

ショッピングセンターでピエロを待ち受ける。

すると、膝下を何者かに切られーー。

小説『ピエロが笑う』

文字数:約1500字

私は夢を見ていた。
私は刑事で、他数名の同僚、上司、部下とともにある大きなショッピングセンターに来ていた。理由は、連続殺人犯である「ピエロ」から犯行予告が届いたから。

「〇月〇日、〇〇ショッピングセンターを爆破する」

客は帰らせ、ショッピングセンターの中には刑事だけが残っている。一班五名ずつで組み、トイレの浄化槽の中まで危険物がないかどうか捜索する。
しかし、いくら探しても危険物は見つからなかった。

しばらくして、私たちは電気の消えた暗い廊下に横一列で並ぶ。そろそろ、爆破予告の時間だったからだ。おかしいと思う。だって、犯行予告では、爆破時間までは提示されていなかった。だけど夢の中では確かに、「そろそろ爆破時間だ」と認識していた。それが、夢のおもしろいところだろう。

もう一つおもしろいのが、拳銃を構えながら、爆破時刻のはずなのに爆破はされず、ピエロが現れると確信していた。
絶対にどこかから現れる。そこで、殺すか殺されるかの一触即発の展開になるだろう。

冷や汗が頬を伝う。緊張に身を包んでいると、膝に激痛が走った。私は崩れるように前に倒れる。誰かに、何かで、両膝の下を横一直線に切られていた。咄嗟に両腕を床に着くと、いつの間にか目の前の床に一枚のカードが置いてあった。私の膝から飛び出た血がカードにどっぷりと乗っているが、かろうじて文字は読めた。

「僕は君に好意を抱いている」

ちゃんちゃらおかしい話だが、私は直感した。犯人のピエロは、私のことが好きで、拉致しようとしていると。

「うわぁ!」
「きゃー!」

横から、何人かの悲鳴。刑事たちが両耳を押さえながらうずくまっていた。その顔は苦痛に歪んでいる。

あぁ、鼓膜を破られたんだ。

私には分かった。しかし、犯人のピエロは私に傷を負わせたときも、彼らの鼓膜を破ったときも、姿を現していない。一体、どうやってやってのけたのだろうか?

そんなことを思いながら、目を覚ました。

私は椅子に座っていた。まず目に飛び込んできたのは、暗いコンクリートでできた天井。仰ぎ見るようになっていた首をかくんと前方に落とすと、自分の腕は椅子の肘掛に白い包帯のようなもので固定されていた。

自分の状況に驚き、身体を動かそうとしたが無駄だった。両脚も、椅子に包帯のようなもので固定されている。指先一つ動かすことはできなかった。
動いていると両膝に痛みが走った。膝下には手や脚よりも入念に包帯が巻かれていた。うっすらと赤いものが滲んでいる。

周りに視線を動かしてみても、私がいるこの空間は真っ暗で、近くに白熱灯のスタンドが一つ、寂し気に置かれているだけだった。

先ほどまで見ていた夢を思い出す。脳内でフラッシュバックされた情景。いまいるこの状況。訳が分からず、震えだす。脳が振動し、夢の情景を歪める。

突然、錆びた音が響いた。暗い空間で気付かなかったが、私が座る位置から数メートル先に扉があったらしい。その扉が、少しずつ開き、一条の光を差し込ませる。
姿を現したのは、ピエロだった。私が、夢の中で追っていたはずの「殺人犯のピエロ」。

身体の震えは再度訪れた。怯える私に向かって、何か四角いものを取り出し、胸に掲げる。
カードには「僕は君に好意を抱いている」と書かれていた。

その瞬間、全てを理解した。
そうだ、あれは夢じゃなかった。現実だったのだ。私は、ピエロに膝下を切られ、仲間の鼓膜を破られ、そして拉致された。
私はまたしても天井を仰ぐ。もう、ここに監禁されて数日が経つ。なんで夢だと思ったのか、現実逃避のレベルが高くて自嘲する。

ちらりと、ピエロに目だけを向ける。
ピエロは、脱力する私の姿を見て、満足そうににたりと笑った。

朗読動画『ピエロが笑う』

動画時間:約6分

あとがき

私は暗所恐怖症ではないと思っているが、あたり一面同じ色のなかにいると、感覚がおかしくなることはわかる。

経験したことがあるのは、あたり一面「白」。私はウィンタースポーツが好きで、よく雪山に行く。そこで、風が強かったり天候が悪かったりすると、視界がホワイトアウトして何も見えなくなるときがある。白色しかない世界を滑っていると、左右、動いているのか止まっているのか、自分はちゃんといまここにいるのかなどなどがわからなくなるのだ。

これ、とても怖い。前方に急に崖が現れるかもとかいう恐怖とはまた別。変な世界に迷い込んだ気分になるし、自分しかいなくなってしまったのではないかとか、底知れぬ怖さがある。

人の姿を見ると安心する。余談だが、そんなホワイトアウトの世界をスイスイ滑れる人、物理的な恐怖や感覚的な恐怖がないのかなと、すごいと思う。

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