こんにちは、松波慶次です。
このたび、初読み作家さん、山本周五郎氏の作品集『おたふく』を読みました。
その収録作や感想をまとめています。
以下ネタバレ注意です!

タイトル:山本周五郎名品館Ⅰおたふく
作者:山本周五郎
編:沢木耕太郎
あらすじ
父親の敵討ちをしようとする女性を描く『晩秋』。
夫のことが大好きな女性を描く『おたふく』。
生まれながらにして”男”として育てられた女性の苦悩を描く『菊千代抄』。
全9作収録された短編集。
【収録作】
・あだこ
・晩秋
・おたふく
・菊千代抄
・その木戸を通って
・ちゃん
・松の花
・おさん
・雨あがる
感想
時代小説とでもいうのでしょうか、現代が舞台ではない。江戸とか、そこらへんの時代が舞台の物語。
男性目線で、その男性から見た周りの女性(妻など)が描かれていて、主に夫婦が登場する、時代×日常のストーリーです。
本冊に収録されている作品のなかで、私が一番好きなのが『菊千代抄』。武家の娘として生まれながら、男として育てられ、自身が女だと気付いても「ずっと男として生きてきた」からいまさら「女」として生きられない、主人公・菊千代の葛藤や苦悩が描かれています。
菊千代が女であることを知っていて、男として接しつつも女として扱う椙村半三郎がまたいい男といいますか、菊千代に「女と知っていたこと」の怒りをぶつけられ、刺されたときには「え、刺しちゃうの⁉ 菊千代、半三郎のこと好きなんじゃないの⁉」とショック。
半三郎が菊千代を「女」にしてあげれば……と思っていたら、最終的には半三郎は生きていて、しかも菊千代から「女にしてくれ」と泣きながら訴えたときには、「あぁ良かった」とほっとしました。
余談ですが、私は『菊千代抄』を読みながら、『銀魂』の九ちゃんのことも考えていました。柳生九兵衛。生まれながらに男として育てられた女性。九ちゃんも苦悩していましたが、菊千代も感情を抑えられないほど、激しい怒りを感じるほど、自分の立ち位置が不安定で、心も不安定になった。
半三郎が菊千代を追ってくれて良かった。生きていてくれて良かった。記憶に残る作品です。
