こんにちは、松波慶次です。
今回ご紹介するのは、第164回芥川賞を受賞した『推し、燃ゆ』です。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:推し、燃ゆ
著者:宇佐見りん
目次
あらすじ
あかりの推し、上野真幸がファンを殴って炎上した。
推しを推すためだけに生きてきたあかりの、揺れ動く心情と生きづらさが描かれるーー。
感想
「あらすじ」、短いです。でも、内容は厚い。ストーリーの内容というより、登場人物の心情や性格の描き方が圧倒的で、厚く重いものが、私にのしかかってきました。
それは、私が「小説を書く者」だからかもしれません。正直言うと、1ページ目に目を通したとき、少し読みづらさを感じました。字がすっと頭に入ってこないような。
数行読み進めると、一瞬感じた読みづらさが嘘のように、字が私に入り込んできました。文字のシャワーを浴びたかのように一気に宇佐見さんの文体に引き込まれ、洗練された美しい比喩や表現の虜となりました。
美しい文体で描かれる主人公・あかりの心情や性格。家族や友達、バイト先の雇い主の心の機微まで手に取るように分かって、その美しさから目が離せなくなりました。
ページ数は多くなく、登場人物も少なくて複雑な人間関係があるわけでもない。どんでん返しもない。
それなのに読むものを惹きつけるのは、登場人物が「1人の人間」として細やかに存在しているから。
芥川賞受賞も納得の描き方。宇佐見さん、本当にすごいです。尊敬します。
推しがいる人もいない人も、一人の少女の「生」が描かれた作品、ぜひ読んでみてください。