こんにちは、松波慶次です。
小説投稿サイト「エブリスタ」に投稿していた短編コメディ小説「摩訶不思議戦国アドベンチャー」第17弾。
なんか16弾のときに”「エブリスタ」に投稿していた「摩訶不思議戦国アドベンチャー」はこれにて最後”とか言ってましたが、改めてエブリスタで自作品を見てみたら「まだあるじゃん」と気付いたので、せっかくなので載せました。
織田信長の息子たちが登場しています。
信雄と信孝
織田信長の次男、織田信雄はいつもの威勢はどこへやら、辛気臭い顔を浮かべ縁側に座っていた。
それを見かけた信長の三男、織田信孝は、信雄に歩み寄る。
「兄上、どうしたのですか? 貧乏神のような顔をしていますよ? 便秘ですか?」
「なぜそうなる」
信雄は信孝を見向きもせず、「はぁ」と大きな溜め息を吐いた。
「なんかさー。俺、ダメな武将のレッテル貼られてるじゃん? 名前もさー。よく、『のぶお』って読み間違えられるんだよね。『のぶかつ』なのに。そんでさ、弟であるお前の方が優秀みたいな、そういう話もよく聞くし。なんか、やる気なくしちゃうよね」
もう一度、大きな溜め息を吐いた。そうするたびに、信雄の身体は萎んでいくようだった。
そんな信雄を憐れみのこもった目で見つめた信孝は、こほんと咳払いをする。そして、意を決したように口を開けた。
「そりゃそうでしょ。兄上はダメで阿呆な武将ですよ。私よりも頭が悪いし、行動力もないし、簡単に調略にもかかってしまう。そんなんだから名前まで間違われてしまうんですよ。そんな火を見るより明らかな事実を知ったところで、何を落ち込んでいるんですか? やっぱ阿呆なんですか? もっと楽観的に生きてくださいよ。そこが唯一の強みなんですから」
「……信孝、お前。前から思っていたが腹黒いよな」
「え?」
にっこりと笑う信孝の目は、一切笑っていなかった。
「でもよぉ。結局、お前も負け組だぜ? 信孝さんよぉ」
突然入ってきた新しい声に、信雄と信孝は同時に顔を上げた。
すると、三法師が意地の悪い笑みを浮かべながら立っていた。信長の長男、信忠の息子である。
「信雄さんと信孝さんお二人が信長さんの後継者争いに負け、俺が頂点を極めたんだ。俺から言わせりゃ、お前ら二人とも阿呆だね」
ぐへへへへと小さい子供が発するとは思えない下劣な笑い声を上げながら、取り出した扇子を口元で扇ぐ。
勝ち誇ったような三法師に、信孝は相変わらずの笑顔を向けて言い放った。
「うるさいですよ。あなたも結局、サルに持ち上げられたただの傀儡だったじゃないですか」
サルとは、豊臣秀吉のことである。織田家の後継者は嫡男が引き継ぐべし、ということで、最初に持ち上げていた信雄を下ろし、次に目をつけたのが三法師であった。秀吉が天下を獲るため、織田家再興という大義名分で持ち上げただけの形だけの主君。
信孝から現実を突き付けられた三法師は扇子を扇いでいた手を止め、身体をふるふると震わせる。
そして、さらに追い打ちをかけようと口を開いた信孝が言葉を発する前に、三法師は扇子を半分に折り、泣きながら立ち去った。
「信孝やだー! 嫌いー!」
そんな、子供らしいセリフを残して。
「はっはっは。ガキが。どっか行っちゃいましたね」
隣で楽しそうに笑う弟を横目に見て、信雄は思うのであった。
(俺もこの弟、やだ)
完
あとがき
これを書いた2018~2019年くらいのときは、信雄は「ダメダメ」なイメージがありましたが、近年では実は優秀だったとか、研究が進んで見直されてる傾向があるようです。蜀の劉禅、越前の朝倉義景なども「実はすごい人だった」みたいな話がありますし、やっぱ歴史が解明されていくと従来のイメージとは異なる人となりが見えて、それはそれで面白いですよね。
信雄に関して言えば、映画「清須会議」の妻夫木聡が演じている信雄がひどすぎた笑 小説を読んだうえで映画を見ましたが、阿呆っぷりについ笑ってしまうほどでした。「清須会議」、まだ見たことない人はぜひ読んで(見て)みてください。
