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【波の上の甲虫】現実か創作か……メタフィクション小説

こんにちは、松波慶次です。
今回ご紹介するのは、『波の上の甲虫』です。

いとうせいこう氏、初読み作家さんや。

以下ネタバレ注意です!

タイトル:波の上の甲虫
著者:いとうせいこう

目次

あらすじ

南の島の暮らしをテーマにした小説を書いてくれと編集者に頼まれた僕は、ボラカイ島にやってきた。

島の人たちとの出会い、釣りやお酒など、のんびりとした生活を送り、それを小説として手紙で日本に送る。

しかし、手紙に書かれた出来事は現実ではなく、実際には優雅とは言えない生活をしていた。

やがて、手紙(創作)の人物が現実に現れ始め、創作の世界から逃れようともがく。

感想

読後感は、ふわふわと、心地よさもあり、若干の怖さもありました。

主人公が送っていた手紙は、なんと1通も編集者に届いておらず、唯一届いていたのは、たった1通の葉書だけ。

それは、創作の世界に呑まれず、現実を生きようともがいた証拠。

と、いうことは、手紙を書いていたこと自体が創作だった?

『波の上の甲虫』という作品は、主人公が創作の出来事を綴った手紙を書き、現実との交錯にやがて怯える話。

しかし、それ自体が読者を惑わす「作品」だったのか?

主人公は手紙なんて書いていない。ただ、最後に「現実」だけを匂わすことで、主人公ではなく、創作と現実の世界に翻弄された私たち読者を怯えさせたかったのか。

実際、私は迷子になりました。狐につままれたような感覚を覚え、考え込んでしまいました。

揺蕩うような美しい文章。ボラカイ島の描写も、南国らしいのどかさがあります。

その中にある驚き、ぜひ味わってください。