こんにちは、松波慶次です。
小説投稿サイト「エブリスタ」に投稿していた短編コメディ小説「摩訶不思議戦国アドベンチャー」第12弾です。
鉄砲傭兵集団・雑賀衆の統領、雑賀孫市と本願寺顕如の会話。
※執筆時期は1、2くらい前
孫市の呟き
鉄砲傭兵集団、雑賀衆の統領、雑賀孫市は本願寺の一室で寝転がりながら外を眺めていた。対織田軍のため、雑賀衆の雇い主である本願寺顕如は、そのだらけきった後ろ姿を苛立ちを込めた目で見ていた。
「おい、孫市よ。もっと気を引き締めろ。そもそもなぜお前が私の部屋で寛いでいるのだ」
「ん? 暇だから」
(まったく、この男は……!)
孫市のことだ、顕如は何を言っても無駄だと悟り、読んでいた書物に目を落とす。
「なぁ」
「……」
「無視すんなよ」
「……なんだ?」
「俺の本名、鈴木孫市って言うんだぜ」
「……そうか」
「鈴木って、結構メジャーだよな」
「まぁ、そうだな」
「なんか、つまらないよな」
「……」
顕如は心の中で思い切りツッコんだ。
(だからなんだ!!)
と。
しかし、孫市はそんな顕如の心中など知らず、シャボン玉を吹くようにぽんぽんと言葉を紡ぐ。
「いいよなぁ。本願寺さんは本願寺さんで。なんかかっこいいよな。他にもよ、織田だったり、羽柴だったり、毛利ってのもメジャーじゃない。いいよなぁ、数少ない名字で」
「……なんかよく分からんが、お前も『雑賀』と名乗っているから、いいんじゃないのか?」
仕方なく書物から顔を上げ、孫市の寂し気な背中を見る。その背中から続く言葉がないことが気にかかり、顕如は優しい声音で諭し始めた。
「大切なのは、名字じゃないだろ? 名とは、いわゆる呼称であり、名がかっこよかったとしてもその人物が勇敢だとは限らない。その人物の器が備わってこそ、名は活きるのだ。お前が今回の対織田戦で、『雑賀孫市』としてでも、『鈴木孫市』としてでも、後世に語り継がれる活躍をすれば、きっとどちらも憧れの名字になると思うぞ」
孫市から、返事はなかった。
代わりに聞こえてきたのは、静かな、寝息。
顕如は立ち上がり、孫市の背中を思い切り蹴り飛ばす。
孫市は見事、庭に転がり落ちしたたかに顔を地面に打ち付けた。
完
あとがき
孫市、かっこよくて好きです。
掲げていた八咫烏も、かっこいいですよね。
戦国時代が好きすぎて、私は多くの「戦国グッズ」を持っています。
その中には、雑賀衆をモチーフにしたTシャツも(笑)
黒地に、金色の八咫烏や火縄銃が煌々と描かれており、「雑賀衆」とこれまた金色の文字でデカデカと。
どこかお出掛け♪
というときには着なかったですが、スポーツやるときには着ていました(^^;