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【ロスト・ケア】介護×ミステリー|現代を生きる者必読の一冊!

こんにちは、松波慶次です。
今回ご紹介するのは、『ロスト・ケア』

これ読むと、日本の「少子高齢化」がとてつもなく心配になります……。

以下ネタバレ注意です!

タイトル:ロスト・ケア
著者:葉真中顕

あらすじ

少子高齢化が進行し、介護を必要とする者が増えた日本。親の介護を負担と感じる者、介護が必要になった親を施設に入れられる者……「介護を必要とする者」に関わる親族の対応は、「金の有無」によって分かれていた。

父親を高級老人ホームに入れた検事・大友は、老人ホームを紹介してくれた友人、佐久間から、介護業界の闇を聞かされる。

その介護業界の闇の中で、連続殺人事件が起こっているとは、このときはまだ知らなかったーー。

感想

少子高齢化社会。いや、いまは「超」少子高齢化社会と言われているんだったか。

日本がそういう国になって、早十数年。数十年かもしれない。とにかく、随分前から出てきた言葉だ。

『ロスト・ケア』は、まさに「少子高齢化社会の日本」が舞台であり、現在その日本に住んでいる私にとって、「他人事」ではない不安や恐怖を与えてくれる作品です。

介護される者とする者。お金があれば老人ホームに入れて、介護を仕事とする人にお世話を頼めますが、お金がなければ自分で介護するしかない。介護の程度にもよりますが、寝たきりであれば長時間放っておくわけにもいかず、仕事もままならない。すると、収入が減るから、生活が苦しくなる。老人ホームに入れるなんて、夢のまた夢になり、生活の困窮から、気持ちの余裕もなくなってくる。

認知症を発症していれば、「娘」や「息子」など、「自分の介護をしてくれている人が誰なのか」も分からなくなり、それどころか、「自分が介護が必要な状態」であることも忘れて、動こうとする。怪我のリスクが高まって、足の骨でも折れば、回復能力が落ちた身体では少しばかり動けていた状態だったとしても、本当の寝たきりになってしまう。

介護は親族の時間やお金、気持ちをすり減らす。かといって、介護を仕事とする人たちが平気かというと、人手不足が叫ばれている状態を考えると、「平気」とは言い難い。

いくら仕事とはいっても、心ない言葉をかけられたり、身体に負担がかかりすぎたりすれば、働き続ける気持ちが萎むことは容易に考えられる。だって、介護する人たちも人間なのだから。心をもたず、疲れも知らずのロボットじゃないのだから。それでいて働く対価である給料が安いのでは、「仕事を軽んじられている」と感じることもあるだろう。

今作、「正義」として要介護度が高い高齢者を殺害し続けた斯波は、事件が明るみに出ることで日本に「介護の真相」を伝えようとした。実際に真相は伝えられ、介護業界大手の企業・フォレストの不正を叩いていた世間も、「日本の介護制度」や「介護の在り方」について考えるようになった。

私もそのうちの一人だ。まんまと、斯波の思惑にかかった。だけど、「日本」に生きる私にとって、重要なことだ。

葉真中さんの作品は今回が初読みでしたが、社会の問題とミステリーが上手く掛け合わされていて、とても面白かったです。

社会の問題×ミステリーの作品が読みたい方に、おすすめの一冊です。