こんにちは、松波慶次です。
今回ご紹介するのは、『純平、考え直せ』。
お久しぶりの、奥田英朗さんの作品でした。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:純平、考え直せ
著者:奥田英朗
あらすじ
21歳の純平は、ヤクザの世界で尊敬する兄貴分・北島のもと、「男」になろうと意気込んでいた。
そんなある日、親分から「鉄砲玉」になることを頼まれる。
鉄砲玉として、相手のヤクザを殺せば刑務所に入ることになる。それでも、純平は組のため、兄貴のため、自分のために、快く承諾し、決行までの3日間、最後の娑婆を満喫しようとしていた。
同年代の女の子、母親、元大学教授、ヤクザの友達……さまざまな人との出会いがあり、ネットでは純平の暗殺を止める声や冷やかしの声が湧く。
純平は鉄砲玉としての使命を成し遂げられるか?
感想
奥田英朗さんの本は久しぶりに読みました。伊良部シリーズや『無理』など、奥田さんの作品はどれも面白く、読みやすく。
今作も同様。面白くて読みやすかったです。
舞台は新宿・歌舞伎町。ヤクザの下っ端の純平は、頭に血がのぼりやすく、喧嘩っ早い。相手に殴られても折れず、やられたらやり返すほどの負けず嫌いで、純な「不良少年」。
素直な性格が愛されるのか、歌舞伎町ではいろんな人から頼られて、声をかけられて。頼みには応えようとする、優しい性格でもあった。元大学教授の先生から「金の代わりに」と本をもらって、それで許しちゃう?くらいだから、人を信用しやすいまっすぐな少年(青年?)。
そんな純平が娑婆での最後の3日間に出会ったのが、カナ。私は正直、彼女の行動にはムカムカしまして(笑)
どんな行動かというと、純平の鉄砲玉のことをネット掲示板に相談したことです。そんなことして、鉄砲玉が相手のヤクザにバレて、純平が失敗→組からケジメつけられたらどうするんだと考え、勝手に人の大切な情報をバラまくんじゃないよと(といっても、純平もそう簡単に人に話すんじゃないよと)。
そんなだから、「これ、最後ネット掲示板の人たちが純平を止めに来て、鉄砲玉が失敗するんじゃないか?」「ラストは、相手ヤクザに情報が渡っていて、逃げられて失敗するんじゃないか?」と結末を想像。純平失敗。そうなったら、純平の身が危ないし、意気込みもすべて無意味なものに……。
なんて、心配やらワクワクやらで結末を迎えたら、無事に決行できていて、個人的には「良かった」と安堵。
でも、「無事に決行できた」ことは、決行前にやっていたドラッグの幻覚だったのかもと考えました。いまだ純平はドラッグによる夢の中かもしれない……。真実は、「目覚めたらすでに朝で、ヤクザの暗殺に失敗していた」。それはそれで、素直でまっすぐな、実は優しい純平の人生的には、良かったのかもしれない。
考えてしまう、ラストでした。