独り舞台|独白形式のサスペンスショートストーリー

こんにちは、松波慶次です。

独白形式のサスペンスショートストーリー『独り舞台』です。

小説(文章)とともに、朗読動画も載せているので、動画で物語を楽しみたい方は動画をご視聴ください!

目次

あらすじ

愛する女を椅子に縛り、ほかの男とやましいことがなかったかと詰問する男。

女は証拠を示し、誤解が解けたかと思いきや、まさかの一言に男の怒りが再燃しーー。

小説『独り舞台』

文字数:約1400字

ごめんね。突然頭を殴ったりして。痛い? そうだよね。思っていたより血が出たから焦ったけど、良かったよ止まってくれて。  
椅子? あぁ、動かないように手足を椅子に縛っているんだよ。座り心地が悪くないように、クッションは敷いといたよ。
なんでって、君が僕を裏切ったから、僕はこういう行動に出ざるをえなかったんだよ。暴れないで、縛っている紐が解けちゃうから。頑丈にはしてあるけど、心配だからね。
さて、本題に入るけど、昨日一緒にいた男は誰? 仕事帰りに、その男の車でどこかに行っていたよね? 
誤解? やましいことなんてない? そんなに言うなら、その誤解を解いてみてよ。
……ふーん。その男は会社の先輩で、帰り際、体調が悪くなった君を見かねて、病院に連れていってくれたんだ。
本当かな? ホテルに行っていないって証拠はあるのかな? 
これ、見える? 何だと思う? これね、農薬を溶かした水なんだ。農薬だけでも十分死ねるんだけど、水で薄めた方がもがく時間が長くなると思わない? これを君に飲ませたら、君はのたうち回った挙句、見苦しい姿で息絶えるだろうな。
飲みたくないでしょ? 正直に話してよ。証拠? 病院の領収書があるの? バッグの中……あった。あーはいはい。確かに昨日の日付で、病院にかかっているね。
なーんだ。じゃあ僕の勘違いか。 ごめんね、こんなひどいことをして。僕の疑問は解けたから、紐を解いてあげるよ。
え? あなた誰って言ったの? いま。
僕のこと、知らないの? いつも君を見ているのに、君を守っているのに、僕のことを、知らないの? ひどいよ! 今日だって、君を他の男から守るためにこんな心が痛むようなことをしているのに!
君は僕にとっくに気付いていて、あえて無視していると思っていた。プレイの一環だと思っていた。僕はそれで興奮していた。 だけど! 君は本当に僕という存在に気付いていなかったんだね! 
もしかしたら、今日僕が君にした仕打ちは、神様が君に僕を気付かせるためにわざとやらせたのかもしれない。
そんな怯えないでよ。大丈夫。僕は危ない奴じゃない。他の男の方がもっと危険だよ。
家に帰りたいの? 泣かないで。君の気持ちは分かるよ。だけど君は帰ったら、このことを警察に言うだろ? それじゃあ僕は困るんだ。君に会えなくなるなんて、僕にはとても耐えられない。  
ん? 会えなくなる……。何かいい案が浮かびそうだぞ。会えなくなる。僕がじゃなくて、君が、他の人に会えなくなればいいんだ。
君の顔はとても美しいよね。僕は君の顔が好きだ。だけど、顔以上に君という存在が好きなんだ。君と一緒にいられるだけで幸せさ。
もし、その顔が醜くなったら、君は街を歩けなくなるかな? どこにも行けず、誰とも会えなくなるかな? 僕の側から一生、離れられなくなるかな? 大丈夫だよ、安心して。僕は君の顔が醜くなったって、決して遠ざけたりはしないから。さっきも言っただろ? 君という存在が好きだって。
あぁ、暴れないでよ。まだ紐を解いていないんだから、紐が肌に食い込んで傷付けてしまう。
ちょっと待っていてね。
お待たせ。どうかな、これ。アイロン。熱そうでしょ? これ、君の顔二か所くらいに当てさせてよ。目立つ火傷ができたら、君は誰とも会いたくなくなるでしょ?
だから、暴れないでってば! 
僕だって、君に必要以上の傷を付けたくないんだ。熱で皮膚が溶けるときは痛いかもしれないけど、我慢してね。ちゃんと、手当てはするから。 顔、強張ってるよ。緊張を解いて。
あーもう! 喚かないでよ煩いなぁ。まずはその煩い口から、アイロンがけしていこっか。

ー終ー

朗読動画『独り舞台』

動画時間:約5分半

あとがき

独白形式の小説書くの、好きです。楽しい。

ほかには著書『自殺考察』に収録の『六道巡りツアー』も独白形式です。気になる方はぜひそちらも読んでみてください。

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