こんにちは、松波慶次です。
今回ご紹介するのは、『独白するユニバーサル横メルカトル』です。
最初は、タイトルが何のことを言っているのか全く分かりませんでした。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:独白するユニバーサル横メルカトル
著者:平山夢明
あらすじ
地図帖が独白する、仕えていたタクシー運転手である先代の”使命”と、その息子の行動と危機についてーー『独白するユニバーサル横メルカトル』。
たろうくんが出会った、一人のみすぼらしいホームレスのお爺さん。たろうくんは優しくて、お爺さんと会ったり、話をしたりしていましたが、”あること”を知りたくなりーー『C10H14N2(ニコチン)と少年』
全8篇収録の短編集。
感想
平山氏の作品は、初読みでした。
『独白するユニバーサル横メルカトル』の名前を聞いたときには、どういう話なのか、また、そういうモノがあるのかも浮かばず、表紙絵から「なんだか残酷そうな話だなぁ」と漠然と思っていただけでした。
それで気になったものですから、平山氏の初読み作品として手に取り、ページを捲りました。
そうしたら、1篇目の『 C10H14N2(ニコチン)と少年 』で、内容の(胸糞悪いという意味での)ひどさに心をグッと掴まれました。好みなんです、胸糞悪い作品(笑)
この作品は、最後の一文がひどすぎます。何度も読み返してしまうほど、素敵で、面白くて、つい笑ってしまいました。
とても印象深い作品です。
他に印象深い作品は、地図帖が主人公の『 独白するユニバーサル横メルカトル 』も類を見ない語り手で面白かったですが(タイトルの意味は今作のあらすじを見て「そういうことか」と分かりました)、私は『怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男』ですね。一番最後に収録されている作品です。
幼いころの歪な暮らしで数字にこだわるようになったMCという男が主人公。残酷、残虐な拷問が繰り広げられ、読んでいる最中「痛い痛い!」と思わず身をよじってしまうほどでした。
しかしただ残酷なだけでなく、ちょっと切ない。この作品の”被害者”は、生まれたときから”被害者”で、”そう生きるしかなくなってしまった”。
他にはジャングルで死にそうな思いをする親子がいたり、殺人犯に助けを求める少女がいたりする話もあり、サイコスリラー系、SF系と独特な世界観が繰り広げられている作品集ですが、最後に読者の心を「しゅん」とさせるこの収録順は、さらに良さを引き立てていると思いました。
拷問や殺人などなかなか残虐なシーンが多い短編集ですので、抵抗のある方はお気をつけてお読みください。
「全っ然大丈夫!」という方は、ぜひこの世界観を楽しんでください。
サスペンス小説の読書記録はこちら
私の著書一覧はこちら