こんにちは、松波慶次です。
サスペンス×ショートストーリー『誰のこと?』の小説と朗読動画を載せています。
あらすじ
ある日郵便受けに届いた、一冊の黒い本。
それには、人をいたぶる、残虐な内容が記されていた。
気持ち悪い。でも、まるで僕が体験したことみたいだーー。
小説『誰のこと?』
文字数:約1100字
郵便受けが、カコンと乾いた音を発する。
僕は作業をする手を止め、郵便受けからいましがた届いた物を取り出す。
仕事場に届いたのは、一冊の本だった。
カバーは真っ黒。厚さは1センチにも満たない。A4サイズのそれを手で弄びながら、作業をしていた台まで戻る。
「なんだろね? これ」
誰にともなく問いかけながら、ページを捲る。
3月4日 大友達也は熱々のフライパンを顔に押し当てられる。皮膚が溶け出す。悲痛な叫びが響く。
顔だけでなく、服を剥ぎ取られた胸にも。
やがて、大友達也はショック死した。
「うわ、気持ち悪。想像するだけで痛いわ」
吐き気が込み上げ、口元を覆う。
次のページを捲る。
4月10日 大友達也の妻、さつきを椅子に固定。何で殴られたら一番痛いか、検証実験開始。
木刀、竹刀、金槌、金属バット、棍棒。
足、腕を中心に検証していたが、頭を重点的に殴ることに。
金属バットで一発だった。死んじゃった。
「そりゃそうだろ」
僕はこの気味の悪い、日記とも、実験ノートとも言えるものをげんなりと見つめる。
次のページ。
5月20日 大友達也とさつきの息子、和樹が乗り込んできた。なんでそんなに怒っているのか、分からない。
「すごい。この犯人のところに攻め入ったってことか」
5月25日 手の指数本を切断し、台に寝かせてある。衰弱は目に見えて分かる。そろそろ飽きてきた。
ナイフを胸に突き立てる。死んだ。
「ナイフか……」
その次のページは、白紙だった。
「これ、不思議な本だな。なんだか僕が体験したことみたいだ。そう思わない?」
僕は、台に横たわる男に問いかける。その男も、指が数本なかった。
口にガムテープを貼られ、言葉を喋ることができない男は、目を大きく見開き震えだす。
寒いのかな?
「これ、誰のことなのかな? デジャブみたいだ」
震える男は答えない。その代わりに、僕が手に持っているナイフを見つめている。
「あ、持ってるの忘れてた。でもなぁ、ナイフだとこの本の話と被るし、つまらないよね」
男は首を激しく横に振る。そんなにナイフがいいのかな? でもーー。
「だめ。この本の思い通りにはさせない」
瓶を手に持つ。中身は硫酸。
「お父さんみたいに、顔がドロドロになるよ」
涙を溜めた男の眼球に向かって、瓶を逆さにし中身を全てこぼす。
男の身体は激しく震えたが、やがて動かなくなった。
硫酸と、赤い液体が台を伝い、床に落ちる。
本をもう一度見る。
ナイフの文章が、消えていた。
代わりに。
硫酸で顔を溶かされ死亡。
「んー、この本やっぱなんだろう? 不思議だなぁ。それに、誰のこと書いてるのかな?」
瓶と本を、横たわる男の胸に置き、淹れておいたコーヒーを飲む。
「うん、おいしい」
朗読動画『誰のこと?』
動画時間:約5分
あとがき
修学旅行のお土産に、ではありませんが、京都旅行をしたときに木刀を買いました。
もともと歴史が好きで、京都に行ったら有名な寺社仏閣だけでなく、新選組や攘夷志士ゆかりの地とかにも足を運んでいます。
私は新選組が好きです。特に土方歳三が好きです。木刀を買ったのは高校生のときですが、そのときも新選組等々に関わる場所に行き、これは買わねばと木刀を買った所存です。
その木刀に、「洞爺湖」と掘ろうか迷ったこともありました。これは、わかる人にはわかるネタだな。結局、掘っていませんが。
