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【聖母】母親は娘のためなら鬼にも悪魔にもなれるのか?

こんにちは、松波慶次です。
今回ご紹介するのは、秋吉理香子さんの小説『聖母』です。

秋吉さんの小説読むのすごく久しぶりでしたが、いや~相変わらず面白い!

以下ネタバレ注意です!

タイトル:聖母
著者:秋吉理香子

あらすじ

幼い男児が遺体で発見された。殺害後に性的暴行を加えられた形跡があり、娘を持つ母親・保奈美は不安に駆られる。

高校生の真琴は、男児を殺害した後も気持ちの満足ができず、次のターゲットを見つける。一度目の殺害で男児を懐柔する要領を得ていたため、次の殺害も成功したが、決定的な証拠を残してしまったかもしれないと不安に駆られる。

母は娘を守れるのか? 真琴は犯人として捕まってしまうのか?

感想

秋吉さんの小説は、数年前に読んだ『暗黒女子』以来でした。『暗黒女子』のイヤミス感がとてつもなく好きで、それ以来秋吉さんのファンになりました。

数年ぶりに秋吉さんの小説に触れて、相変わらずの読みやすい文章、テンポの良さに惚れ惚れ。あいにく時間がとれず、2回に分けて読み進め読了しましたが、時間さえ許せば一気読み必至の面白さでした。

さっそく小説の内容について話していきますが、前述しているようにネタバレ注意なので、それを十分踏まえたうえで、「OK分かってるよー!」という方のみ読み進めていってくださいね。

この小説、帯文にもあるようにラストのほうで「世界は一変」しますから。

↓以下、ストーリー&ネタバレまとめ

居住地の近くで幼い男児が殺害された事件に、胸を痛めるとともに娘のことを心配する保奈美。保奈美は辛い不妊治療のすえ娘を授かったため、何が何でも娘を守りたかった。

幼稚園児の薫と過ごしながら、事件解決=犯人逮捕に向けて夜中に見かけた蓼科という怪しい男をマークし始める。

そして、本当の犯人である高校生の真琴は、2人目の男児の殺害を行う。剣道部に所属し、男女ともに人気のある真琴は、殺害後に参加した部活で同級生から頬が切れていることを指摘され、抵抗した男児に引っ掛かれたことを悟る。

漂白剤で遺体を丹念に拭き証拠を残さないようにしていたが、自分の皮膚を裂いた男児の爪の間まできちんと拭いたか不安に陥り、その後の進路相談でも母親に心配されるほど心ここにあらずだった。

しかし、心配は無用だった。母親である保奈美が、男児の指を10本とも切断していてくれたから。そして、昔、保奈美の娘である真琴を強姦した蓼科を自殺に見せかけて殺害し、男児殺害の罪も被せたため、真琴は二度と「人生が壊れる」恐怖に駆られることなく、娘の薫と母親の保奈美と平穏に生きていけることになったーー。

ん?

って思いました?

簡潔にミスリードさせてから、さりげなく真実を書いてみたんですが……お分かりいただけただろうか?(←)

主婦・保奈美、幼稚園児・香、女子高生(犯人)・真琴の三人の女性。

小説内で、保奈美の娘が薫、真琴は男子高校生で男児殺害事件の犯人、という風に描かれているのですが、真琴が犯人ということ以外はすべてミスリード

正しくは、保奈美の娘が真琴で、真琴の娘が薫。真琴は、中学生のときに蓼科に強姦され、薫を身ごもった。産みたくないという真琴に、保奈美は自身の辛い経験から「妊娠は奇跡が重なったもの」だと諭し、薫が生まれる。

ミスリードから真実が公開されていく過程が、実にさりげなく、文中にさらっと書かれているため、その文が目に入ったとき「ん?」となりました。そして頭の中で整理して、少しずつ感じていた違和感が繋がったとき、「なるほどな~」と納得。

自分を強姦してきた男の血が流れる子供をこんなにも愛せるものだろうか? という疑問はありますが、真琴は薫を愛し、保奈美は真琴を愛しています。

その結果、真琴は蓼科に似て乱暴だった男児2人を殺害し、保奈美は過去に真琴を傷つけた蓼科を殺害し、それぞれ脅威となる者を排除しました。それだけでなく、保奈美は蓼科に真琴の罪を被せることで、真琴の人生も守ったのです。

十分面白いストーリーとテーマ。「女って、やっぱ色々大変だよな」と改めて感じました。(結構頻繁に、生理、出産、性犯罪被害など、女性特有のものに対し「大変だ」と感じています。それだけでなく、スポーツの世界や芸術の世界でも、筋肉量、手の大きさ、長さなどで女性が見られる世界や描きだせる世界は、男性が見られる世界、描き出せる世界には到底辿り着けないのだとも、スポーツをやっている中で痛烈に感じたことがあります(女性が100m走で世界ランク1位を出せない、男性が出す力強い音と同じだけのものを出せない、というような意味です)。才能や努力というものでは補えない、男女の身体のつくりの違い。性差というものは、とても大きいです)

サスペンスとして男女問わず楽しめますが、特に女性の読者は、私のように色々思うところが出てくると思います。

熱中して読んでしまうため、まとまった時間のあるときに読むことをおすすめします。

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