こんにちは、松波慶次です。
今回は対動物もので身の毛もよだつ恐ろしい小説『シャトゥーン ヒグマの森』をご紹介します。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:シャトゥーン ヒグマの森
著書:増田俊也
あらすじ
薫と娘・美々、薫の同僚・瀬戸は、薫の双子の弟や友人が待つ天塩林の小屋の中で年を越すはずだった。
しかし、小屋に向かう途中でヒグマに襲われた人間の死体を見つけ、それを避けようとし車が横転、使い物にならなくなる。
ヒグマが近くにいるかもしれない……その恐れから、車に積んだ食べ物は次の日、明るくなってから取りに来ることにし、警戒しながら徒歩で小屋に向かった。
その日の夜、ヒグマのギンコが小屋を襲う。電波は通じない。食料はない。小屋はいまにも壊れそう。ヒグマの猛攻は続く。
この状況を打破するため、薫たちは思考を巡らせ、命がけの策に出るーー。
感想
クマ怖ぇ〜〜。
クマの怖さはドキュメンタリー番組やネットの情報で聞き齧っていたのですが、この作品を読むとよりリアルにその恐ろしさが分かります。
爪の長さ15cm、5トンを持ち上げる力、俊敏な速さ……木登りも泳ぎも得意で、しつこさも「しつこすぎ!」と叫びたくなるほど。
その恐怖が万遍に散りばめられており、人の殺し方も、食べ方も丁寧に描かれているため、「野生」を感じます。あ、なかなかグロいので、苦手な方は要注意です。
ヒグマの怖さだけでなく、ストーリーもきちんと伏線回収しているので、そちらも読み応えがあります。
人間たちの新たな事実が露見されながら、クマと戦う。人間とクマの壮絶な死闘。自分だったらどうするだろう? ここで、こう立ち回ったらどうだろう?
まるで、自分がその場にいるように「自分だったら」を考えてしまいます。
北海道の冬の話なので、寒冷地の対処法も参考になります。凍傷にならない方法や、暖をとる方法。北欧の寒さの厳しい国の人たちがお酒を好むように、やはり酒は暖をとるのに適しているのだと改めて分かります。
ストーリーの最後に、薫が残した提起が考えさせられる。動物を守ること……自然を守ること……それはとても大切だけれど、命を賭して守るべきものなのか?
私は、分かりません。その道の学者さんにとっては「そうだ」と頷けるものなのかもしれません。しかし、その人たちの家族にとっては「そんなことない」と言いたくなるのかもしれない。
人それぞれの考え方によるでしょうし、こんなことを考えること自体が人間のエゴなのかもしれない。自然は、人間に守ってもらわなくても自分たちで上手くやっていくのかも……。
この作品は、ただのヒグマの恐怖を描いた作品ではありません。人間と自然、それらをヒグマを通して描かれていると思います。
内容は凄惨ですが、興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。
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