こんにちは、松波慶次です。
今回は初読み作家さんの江戸川乱歩!
江戸川乱歩って、「江戸川コナン」の苗字の由来の印象が強すぎる……あとは、ミステリー作家という印象……
しかし、今作はミステリーとは言い難い。人間の奥底を描いた、『芋虫』をご紹介します。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:芋虫
著者:江戸川乱歩
あらすじ
戦争で手足を失い、口も利けなくなった夫を献身的に支える妻。しかし、妻は胸の内にある黒い思いを秘めていてーー(「芋虫」)
表題作「芋虫」他
夢遊病である息子と父親を取り巻くある事件ーー(「夢遊病者の死」)
無実を装う故意で殺人を犯す男の話ーー(「赤い部屋」)
計10作が収録された短編集。
感想
初っ端から表題作「芋虫」がきて、テンション上がりました。
江戸川乱歩は初読み作家さんでしたが、読みやすく、すんなりと物語の世界へ入り込むことができました。文体は「昔の文豪」らしい感じで、古い言葉遣いなどもありますが、それがまた物語に合っていていい味出している。
読みづらさを感じる人はいるかもしれませんが、私は好きな作家さんで、すぐに気に入りました。
話が脱線しましたが、表題作「芋虫」。手足がない、いわゆるダルマ状態の人間だから、芋虫。
妻の、夫をいじめる激情は理解できなかったです。しかし、この妻、そんな夫をずっと介抱してきたのですから、妻にしか分からない負の感情が湧くのも仕方ないのかもしれません。
そして、夫。死にたくなる気持ちも分かります。妻の激情に触れ、己の不甲斐なさ、情けなさを深く思い知り、これ以上、妻に迷惑をかけないためか、自死を選ぶ。
妻は、安堵したでしょうか? それとも、後悔したでしょうか?
少なくとも、私は、これが2人にとっていい結末だったのではないかと思います。
本を読み終わり、愛用のブックカバーを外し、改めて表紙絵を見たとき……。
母性溢れる、どこか吹っ切れたような安らかな印象を受けるこの表紙絵は、まさに「芋虫」の夫婦の姿。
「芋虫」を読み終わり、この絵を見ると、合点がいきます。そして、素敵な表紙絵であると、胸にすっと落ちるものがありました。
さて、「芋虫」は面白かったですが、もちろん他にも「お!」と思う話は多々ありました。
その中でも、好きなのが「赤い部屋」。
この話は、殺意がないと見せかけて故意に殺人を犯し、99人を殺したと話す男が主人公です。楽しそうに話す男の話を、赤い部屋で聞いている人たち。
殺意がないと見せかけて故意に殺人をする。
どういうことか……?
作中の話を引っ張ってくると、ひねくれ者の盲人が大きな穴の左横を歩いているときに、「危ないからもっと左に寄れ」と言う。しかし、その盲人はひねくれているから「何言ってるんだ」と右に寄る。そして、穴に落ちて死亡する。
善意や不慮の出来事で、相手を「わざと」殺す。
こういう感じです。
この話を読んでいるときに、「こういうやり方で人を死に追いやっている人が、現実にいそうだなぁ」と思ってしまい、怖くなりました。
ってか、そんな人がいたとしたら、まさに「サイコパス!!」じゃないか!
いやー、恐ろしい。
ゲラゲラ笑うような愉快話はなく、かといって、すべてがどんよりと暗いわけでもない。喜劇と悲劇を混ぜたような、ちょうどよい灰色の気分を味わわせてくれる、絶妙な短編集。
私は無事、江戸川乱歩のファンになりました(笑)
他の江戸川乱歩の作品も購入したので、読んだらまたご紹介させていただきます。
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