こんにちは、松波慶次です。
サスペンスホラー×ショートストーリー『囚われる』の小説と朗読動画を載せています。
あらすじ
ほかに好きな人ができたことを理由に彼女と別れた。
だが別れた彼女から「好き」の一言のみのメッセージが届くように。
恐ろしくなった俺は、ついにスマートフォンも解約したがーー。
小説『囚われる』
文字数:約1200字
君にとって、俺はどういう存在だったのだろう。
他に好きな人ができることは、そんなに悪いことだったのだろうか?
君とは三年付き合った。三年目で、俺は他の子に恋をした。その子も俺を好いてくれていた。
だから君に、別れ話を切り出した。
まるで全ての悪の元凶が俺だとでもいうように、君はカフェの店内で叫び、泣き、出されていた水を俺にぶっかけた。
周りの目を気にせず騒ぐ君に、そこで完璧に冷めたのを覚えている。
俺は伝票を持って立ち上がり、泣き崩れる君を振り返ることもなく、店をあとにした。
それから一ヶ月は、何事もなかった。
新しい彼女とも順調で、君のことなんて俺の中から消え去っていた。
ある日。俺のスマートフォン一件のメッセージが届いた。
〈好き〉
ただそれだけが書かれた、君からのメッセージ。
そこまでする必要はないと思って君との連絡手段を絶っていなかった俺は、そのメッセージを無視した。無視したら諦めると思っていた。
俺の考えが甘かったことを思い知らされる。
毎日、〈好き〉とだけ書かれたメッセージが届くようになった。
3日連続で届くようになったから、受信を拒否し、君の連絡先を削除した。
それでも君からのメッセージは毎日届く。
着信も拒否したはずなのに、無言電話も。
理由は分からない。分からないから、俺はスマートフォンが音を発するたびに震えた。
彼女と一緒にいるときにも、常に恐怖はつきまとっていた。
スマートフォンの画面を気にする俺を、彼女は不思議がる。
「ねぇ、どうしたの? 顔青いよ?」
「なんでもないよ」
「なんでもなくないでしょ。 誰かからの連絡を待ってるの?」
「なんでもないって言ってんだろ!」
怒鳴ってしまった。彼女にとってあり得ない俺の豹変に、目を潤ませ、その雫が頬を伝わぬうちに背を見せ立ち去ってしまった。
あとを追おうとしたとき、スマートフォンがメッセージを受信する。
〈好き〉
……俺はスマートフォンを解約した。
*
彼女とも別れ、スマートフォンを解約した俺は、誰とも連絡を取らないまま生活をしていた。
君からの連絡は来なくなり、解放されても、俺の身も心も憔悴したままだった。
ビルが立ち並ぶ道を歩いていたとき、周りが騒ぎ出した。
「危ないぞ!」
「そこをどけ!」
人々が悲鳴を上げながら俺を遠巻きに見ている。その視線は、俺の頭上と俺を行き来していた。
俺に「危ない」と言っているらしい。一体なんだと言うのか。
頭上を見上げる。
君がいた。
泣き腫らした目を真っ赤にしながら、ニタリと笑っている。
ぶつかる寸前に聞こえた、君の可愛らしい声。
「好き」
そこで意識は途絶えた。
あの日から、毎日君が、俺の頭上に飛び降りてくる。
もう何度も頭蓋骨を粉砕し、脳髄をぶちまけ、君のものか俺のものか分からない肉片を周囲にばら撒いた。
死んでからも、逃れられない。君の言葉。
好き。
君の輪廻の中に、囚われた。
朗読動画『囚われる』
動画時間:約6分
あとがき
迷惑メールって迷惑ですよね。迷惑だから迷惑メールなんでしょうが、いやもうほんとに迷惑。
ただのイタズラメール系でも迷惑ですが、フィッシング詐欺とかの詐欺メールはさらに迷惑。間違ってリンクを触ってしまうとかのリスクがありますからね。
迷惑メールのなかに誤って正規のメールが入っていないかを念のため確認する際には、迷惑メールが多いと確認しづらい。そして迷惑メールを削除する手間もある。百害あって一利なしとはまさにこのこと。迷惑でしかない。
さてさて、この「あとがき」で何回「迷惑」と書いたのか。12回でした。意外と少なかったな。あえて増やすことはしませんけど。

