こんにちは、松波慶次です。
今回ご紹介するのは、『怖い絵』シリーズ第2弾『怖い絵2』です。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:怖い絵2
著者:中野京子
あらすじ
解剖をしている視覚的に怖い絵(「テュルプ博士の解剖学実習」)から有名映画にも用いられた絵(「巨大なレッド・ドラゴンと日をまとう女」)、見た目は美しいのに解説を聞くと恐ろしく感じる絵(「晩鐘」)などーー。
絵画そのものが視覚的に興味をそそられるだけでなく、その真意にゾッとする恐怖を感じる作品20作収録の解説本。
感想
前作『怖い絵』に引き続き、今作も面白かったです。
相変わらず、美しく、そして恐ろしい絵画に深く見入ってしまいますし、解説を読み、何度も何度も絵画を見返して、隠されている恐怖にゾッとします。
絵画が描かれている時代が王政の時代だからか、絵画には政争によって犠牲となった人々が描かれていることも多いです。
その中で、「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は印象強いです。解説でも書かれていましたが、悲壮感はややオーバー。それでも、写真と見間違うほどの人物、情景の綺麗さと、ジェーンの白さが際立ち、一度見たら脳裏に焼き付いてしまいます。
わずか16歳だったジェーン。斬首は、処刑人が下手だった場合、首に何度も斧を振るわれる恐れがある。その耐えがたい苦痛を思えば、取り乱してもおかしくはないのに……躊躇いがないその姿に、胸打たれます。
「キリストの洗礼」は、ヴェロッキオとレオナルド・ダ・ヴィンチが共作したもの、ということですが、私は解説を読んで「あ、確かに絵柄が違う」とようやく気付きました(最初に絵を見たときは、特に違和感など感じなかったんです(笑))。
「一流は超一流に潰される」。レオナルドにより絵筆を折り、絵を描かなくなったヴェロッキオ。それでも、レオナルドとの関係が悪化することなく、元々の得意分野(彫刻)で活動し続けたようで、ホッとしました。
小説などの場合、自分を超す教え子が現れたら、辛く当たる、自暴自棄になるなどし、関係は悪化することが多いでしょう(小説に限らず、人間の性格上そうなる可能性は高いですよね)。
ヴェロッキオはレオナルドと良い関係を築けていたのであれば、他人の才を認められる器のでかい人だったのだと、安心しました。なんだかほっこりエピソードです。
「ベツレヘムの嬰児虐殺」は、鳥や壺ではなく、嬰児のままきちんと見たかったですね。もちろん、凄惨な状況であること、怖い絵画であることは分かっているのですが、この絵画は「元のまま」見たかった。
元のまま見ることにより、「本当に感じるべきもの」を感じることができたと思います。
絵画を見て、面白い解説を読むことにより、歴史的知識も、絵画に隠された内容も楽しく知ることができました。
印象深い絵画は多くありましたが、解説の中に白黒で挿入されていた「死と樵」……これも、とても恐ろしく、そして見入ってしまいます……。