こんにちは、松波慶次です。
今回ご紹介するのは、『一九八四年』。
『動物農場』で初読みした作家さん、ジョージ・オーウェルの最後の作品です。
以下ネタバレ注意です!
タイトル:一九八四年
著者:ジョージ・オーウェル
あらすじ
ウィンストンはすべてが捏造され、監視され、過去のほうがよかったと思えるほど貧しい生活を送る現代に対し、不信感を募らせていた。
そのなかで、同じ気持ちを抱くジュリアと出会い、自分たちを支配している党に対して反抗の意志を見せる。
反党の組織「ブラザー同盟」への加入を果たした二人だったが、待ち受けていたのは死への覚悟を上回る苦しみだったーー。
感想
今作、あらすじを読んで私が予想していた結末とは、だいぶ違いました。読了後、正義が負けたことに後味の悪さを感じ、本当に”正義”が主人公・ウィンストンだったのか疑問が生じ、実はこの結末こそがハッピーエンドで、後味の悪さなどを感じる方がおかしいのではないかと、自分の感覚を疑い……いまでも、判断ができません。
党の中枢で働きながら、反党の組織「ブラザー同盟」の一員でもあるオブライエンにブラザー同盟の一員になりたいことを伝えたウィンストンとジュリア。
このオブライエン、てっきり味方かと思っていたら、根っこから党の威信に染まっていた人物で、実はブラザー同盟なんてものもなく、党が反逆者を見極めるために存在させていた偽りの団体。いや、名前のみの存在なのか。
……ということだと思ったのですが、合ってるかな? オブライエンは実は敵。でも、党の反逆者の心を入れ換えさせる、ある意味反逆者の味方、という存在、なんだよな。
オブライエンが裏切った(オブライエンにとっては裏切りじゃないかもしれないけど)時点で、救いがなくなりました。ウィンストンとジュリアは、党を壊すことを夢見て、ほんとうに夢だけで終わってしまった。
なんでもかんでも捏造され、監視され、自由は許されない世界。だけど、絶対的な権力をもった党によって、思考停止した者たちは”これが自由””これが平和”だと感じる。
ウィンストンは、本当にビッグ・ブラザーを愛したのか? 諦めや悔しさによって、愛したのか? 2+2は、本当に5でいいのか? 解説を読んで知ったのですが、作中の数式、原作は答えが空欄らしいです。
それは、ウィンストンの思考が、まだ正常である証拠だったかもしれない。でも、その答えに、ウィンストンは4を入れたか、5を入れたかは分からない。それに、ウィンストンにとって、4が正しいかも分からない……。
ただ、答えが空欄だったことを知り、私がホッとしたことは、事実です。
ジョージ・オーウェル作『動物農場』の読書記録は「【動物農場】人間の愚かさと傲慢さと浅はかさが凝縮された世界」をご覧ください。